社会主義 2009 11 1
書名 社会主義化するアメリカ
著者 春山 昇華 宝島社新書
この本で興味を持ったのは、
「金融商品版PL法は、実現するか」というところです。
製造業は、大いに不満を持っているでしょう。
「我々にはPL法という責任(負担)があるが、金融機関にはないのか」
確かに、今回の金融危機では、このように言われました。
「ウォール街の怪しげな金融商品製造工場で、
これまた怪しげな金融商品を買ってしまって苦しんでいる投資家は、かなり多い」
製造過程で、このような問題が発生した以上、
金融商品にも、PL法(製造物責任法)が必要でしょう。
たとえば、CDOという金融商品は、
高度な金融技術によって製造されたので、
中身がブラックボックス化してしまい、
もはや、この商品の価値は、
格付け会社の格付けに頼るしかないという状態になりました。
CDOについては、このサイトで、今年の3月に、たとえ話を書きました(以下、参照)。
今回の金融危機は、
CDOとCDSが、金融危機を複雑かつ深刻化させたと言えるでしょう。
しかも、厄介なことに、この二つが絡み合っているのです。
CDOは、債務担保証券と言われますが、
要するに、各種債権の入れ物です。
スパイスとして、CDSを混ぜて作ったCDO。
もちろん、食材として、サブプライムローンが使われています。
あろうことか、スパイスのみで作られたCDO(純粋にCDSのみで作られたCDO)。
ちなみに、CDSは、スパイスどころか、金融業界の大量破壊兵器と呼ばれています。
「こんなもの、誰も食べたくない」と思ったでしょう。
そういうわけで、金融市場では、値が付かない、つまり買い手がいない状態です。
(以上、参照)
社会主義化するアメリカについては、
以下の「アメリカ人民共和国」も参照してください。
アメリカ人民共和国 2009 5 5
もちろん、「アメリカ人民共和国」という国はありません。
昔は、「アメリカ合衆国」と言いました。
思い起こせば、
1917年のロシア革命で、多くの企業が国有化され、
1959年のキューバ革命でも、国有化がありました。
最近では、2008年、アメリカで、
住宅金融会社が国有化され、
続いて、AIGも国有化され、
さらに、シティグループも実質的に国有化されました。
(こちらは、「国営化」かもしれません。どちらにしても似たようなものです)
ついでに、自動車会社も国有化するかもしれません。
こう書くと、アメリカ人は、反論するかもしれません。
「ロシアやキューバと、一緒にするな。
我々の国は社会主義国になったわけではない。
放漫経営の結果、いや金融危機によって、
やむなく国有化せざるを得なかったのだ」と。
こんなことは、何の自慢にもなりません。
むしろ、ロシアやキューバよりも悪いと言えるかもしれません。
ロシアやキューバでは、まともに経営していた企業が、
ある日、突然、
社会主義革命によって、国有化されてしまったのです。
決して、放漫経営の結果、国有化されたのではありません。
広瀬隆氏は、著書の中で、こう書いています。
「経営に失敗したら、倒産する。
それが資本主義のルール。
『大きすぎて、つぶせない』という理屈が通るならば、
大企業は、どのような放漫経営をしてもよいという道理となる」
経営に失敗したら、倒産する。
確かに、そのとおりですが、
その大企業が、銀行である場合は、そういうわけにいかないのです。
金融システムが崩壊します。
これが抽象的な言い方ならば、決済システムが崩壊すると言い換えましょう。
しかも、基軸通貨の決済システムが崩壊する可能性があったのです。
そういうわけで、単純に資本主義のルールを適用するわけにいかないのです。
かつて、アメリカの学者は、
皮肉を込めて、保護行政の日本を、
「社会主義国で、唯一、成功した国は、日本だ」と言っていましたが、
今後は、このように言われるようになるでしょう。
「社会主義国で成功した国は、日本のほかに、アメリカも続いた」と。
書名 資本主義崩壊の首謀者たち
著者 広瀬 隆 集英社新書